Web広告費に使える補助金・助成金|対象の媒体も解説

編集:2025年12月

SNS広告やGoogle広告(リスティング広告)なども、販路開拓や新規顧客獲得を目的とした取り組みとして位置づけられる場合、国や自治体が提供する補助金・助成金の対象に含まれる場合があります。
本記事では、Web広告費に活用できる可能性のある主要な補助金・助成金を紹介します。

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Web広告費は補助金・助成金の対象になるのか?

Web広告費が補助金・助成金の対象となるかどうかは、広告そのものの種類よりも、事業計画との整合性や実施体制の明確さによって判断されます。
ここでは、Web広告費が補助金・助成金の対象として認められる条件について詳しく解説します。

事業計画の一部として位置づけられている

補助金・助成金の審査では、Web広告の出稿が事業計画全体の中でどの課題にどう寄与する施策なのかを整理することが重要です。たとえば、事業計画のゴールが新商品の認知拡大や新市場への進出、顧客層の拡大であれば、その目的を達成するための施策の一つとしてWeb広告を組み込む形が望ましいでしょう。
以下のように、課題から効果までの一貫した構成を整理しておくと効果的です。

内容例
目的新規顧客の獲得と地域外からの問い合わせ増加を図る
施策Google広告やSNS広告を活用し、ターゲット層に合わせたプロモーションを実施
効果広告経由のアクセス数・問い合わせ数を増やし、販路拡大を実現

このように、目的から効果までを一貫した流れで示し、Web広告を事業計画の中核的な施策として位置づけることが、採択において重要な要素となります

明確な成果指標(KPI)が設定されている

KPIは、販路開拓や市場拡大といった補助金の目的に即して設計する必要があります
たとえば、「広告出稿3か月でWeb経由の問い合わせを前年比30%増加、Googleアナリティクスで測定」といった形で、数値目標と測定方法を明記しておくと説得力が高まります。

▼代表的な指標と設定例

アクセス数
Webサイトのセッション数やページビュー(PV)を前年比で比較し、集客効果を可視化する
CV数(コンバージョン数)
広告経由の問い合わせ・資料請求・予約数などを指標とし、施策ごとの成果を分析する
CTR・CVR
広告のクリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)を算出し、クリエイティブの改善指標とする
CPA(顧客獲得単価)
広告費を成果件数で割り、顧客1件あたりの獲得コストを算出する
新規顧客比率・地域別分析
新規顧客の割合や、地域別アクセス構成の変化を確認し、ターゲット到達度を把握する

成果物の根拠が残る

実施内容を証明できる資料が不十分な場合、補助金の支給対象と認められないケースもあるため、申請段階から提出を見据えて準備しておく必要があります
たとえば、SNS広告などのケースでは、広告配信期間・ターゲット設定・成果が確認できるスクリーンショットを残しておくことが理想です。加えて、納品日・支払日・掲載期間が補助対象期間内に収まっているかを事前に確認しておくことも重要です。

区分内容例
広告クリエイティブバナー画像・動画・テキスト広告など、実際に配信した広告素材を保存する
配信レポートGoogle広告やMeta広告の管理画面キャプチャ、配信結果レポートなどを記録として残す
成果データクリック数・インプレッション数・CV数などの推移データを保存し、効果を定量的に示す
支払証憑請求書・納品書・銀行振込明細など、支払を証明できる書類を保管する
制作物ランディングページ(LP)のデザインデータや公開URLなど、制作物を成果物として提示する

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Web広告に使える主要な補助金・助成金一覧

Web広告に使える主要な補助金・助成金一覧

ここでは、Web広告に活用できる可能性のある主要な補助金・助成金を紹介します。

小規模事業者持続化補助金

中小企業庁が実施する小規模事業者持続化補助金は、働き方改革、インボイス制度対応、賃金引上げなどの制度変化に対応しながら、販路開拓・集客強化を支援する目的があります。
なお、申請にあたっては、事業実施前に経営計画と補助事業計画の作成が必要で、補助事業終了時点で一定の成果や条件を満たしていない場合には交付されない可能性がある点に留意が必要です。

概要
小規模事業者が経営計画をもとに販路開拓等に取り組む経費の一部を補助する制度
目的
働き方改革・インボイス対応・賃金引上げ等の制度変化に対応しながら、販路開拓・業務効率化を支援
補助対象者
・商工会・商工会議所管轄地域の小規模事業者等
・サービス業(宿泊・娯楽業除く)は従業員5人以下、製造・その他は20人以下など
対象となる経費
ホームページの改修・SEO対策、動画制作、販路開拓ツール導入など、販路拡大・集客強化に関わる投資
補助上限・補助率
補助率:賃上引き上げ特例のうち赤字事事業者は3/4 ※赤字事業者は3/4
補助上限:通常枠 50万円 ※賃金引上げ枠では200万円
申請条件の注意点
・事業実施前の計画作成が必要
・補助事業終了時点で一定条件を満たさなければ交付されない場合がある

※内容は2025年12月時点の情報です。制度は改正する場合があります。
参照: https://www.shokokai.or.jp/jizokuka_r1h/index.html

中小企業新事業進出補助金

中小企業新事業進出補助金は、設備投資やシステム構築、広告宣伝などの経費を補助し、中小企業の成長・拡大を後押しすることを目的としています。
なお、新規事業の展開を通じて付加価値を高め、賃金引上げや地域経済の活性化につなげることを重視しており、従来の事業拡張ではなく新たな顧客層への提供が前提条件となります。

事業計画期間は3〜5年とされ、付加価値額の年平均成長率4.0%以上などの数値要件も定められています。条件未達成の場合は補助金の返還対象となる可能性があるため、具体的なKPI設定や持続的な収益見通しの提示が求められます。

概要
新事業進出を目指す中小企業等に対し、設備投資・システム構築・広告宣伝等の経費を補助する制度
目的
企業の成長・拡大や新市場開拓を促進し、付加価値の向上や賃金引上げ・地域経済の活性化につなげる
補助対象者
新市場・高付加価値事業への進出を図る中小企業等
対象となる経費
機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権関連費、外注費、クラウドサービス、広告宣伝・販売促進費など
補助上限・補助率
補助金額:
・従業員数20人以下 750万円〜2,500万円(条件により3,000万円
・21~50人 750万円〜4,000万円(5,000万円)
・51~100人 750万円〜5,500万円(7,000万円)
・101人以上 750万円〜7,000万円(9,000万円)など
※補助対象経費は、1,500万円以上の申請が必要。交付決定額の減額により、補助金書が補助下限額(750万円)を下回ることとなった場合は、採択取り消しとなる。
補助上限額:
・従業員数20人以下 2,500万円(条件により3,000万円)
・21~50人 4,000万円(5,000万円)
・51~100人 5,500万円(7,000万円)
・101人以上 7,000万円(9,000万円)など
申請条件の注意点
・新規事業であること(提供する製品・サービスが新たな顧客向けであること)
・付加価値の年平均成長率+4.0%以上などの要件あり
・事業計画期間3〜5年
・条件未達成時は返還対象となる可能性あり

※内容は2025年12月時点の情報です。制度は改正する場合があります。
参照: https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250829001/20250829001-6.pdf

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ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、設備投資やシステム構築などの取り組みを支援し、賃上げや働き方改革、インボイス制度への対応を後押しします。
補助上限額・補助率は類型ごとに異なりますが、一般型・グローバル市場展開型・デジタル枠など、事業内容や目的に応じた枠組みが設けられています。いずれの場合も、設備投資の実施が必須条件となっており、広告施策のみでの申請は認められません。

概要
生産性向上や賃上げを目的に、中小企業・小規模事業者の革新的なサービス開発・生産プロセス改善等を支援する制度
目的
働き方改革・インボイス導入・賃上げといった制度変化への対応および競争力強化を促進
補助対象者
中小企業・小規模事業者等
製造・商業・サービス業など業種問わず幅広く対象
対象となる経費
設備・システム構築費、クラウドサービス、広告宣伝費、外注費など
SEO関連のWeb改善や販路開拓ツールも対象となる可能性あり
補助上限・補助率
類型ごとに異なる
申請条件の注意点
・新製品・新サービス提供であること
・付加価値額・給与総額の年平均成長率等の達成要件あり
※本補助事業では、設備投資を行うことが必須

※内容は2025年12月時点の情報です。制度は改正する場合があります。
参照:https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html

地域・自治体の広告費支援・補助金

地域や自治体でも、中小企業の販路開拓や集客強化を目的とした広告費補助制度が設けられています。たとえば、令和7年度の販路拡大支援事業による東京都港区の広告宣伝活動費支援事業補助金では、区内で継続的に事業を営む中小企業を対象に、チラシ制作やWeb広告などの費用を最大40万円(補助率2/3)まで支援しています。
このような制度は自治体によって条件や上限額が異なりますが、地域内の事業者を対象とした支援が多く、地域密着型ビジネスの広告施策に活用しやすい点が特徴です。

※内容は2025年12月時点の情報です。制度は改正する場合があります。
参照:https://minato-sansin.com/koukokusenden_hozyo/

Web広告の種類別! 補助対象か補助対象外かの違い

Web広告の種類別! 補助対象か補助対象外かの違い

Web広告の補助金・助成金は、いずれも販路開拓や集客強化を目的とする場合に対象となるケースが多くあります。ここでは、SNS広告とGoogle広告(リスティング広告)について、補助金・助成金の対象可否や注意点を整理します。

SNS広告

SNS広告は、Instagram・X(旧Twitter)・Facebook・LINEなどのプラットフォームを活用し、新商品や新サービスの認知拡大を目的とした販路開拓施策として位置づけられます。補助金・助成金では、新たな顧客層へのリーチや商圏外への情報発信など、事業拡大に寄与する取り組みとして評価対象となるケースが多く見られます

また、SNS広告は成果を可視化しやすく、クリック数・エンゲージメント数・コンバージョン率(CVR)などの指標をレポートとして提出しやすい点も特徴です。投稿内容や広告画像、配信結果レポートなどを証拠として保存し、補助事業の実績報告に活用できるよう体制を整えておくことが重要です。

Google広告(リスティング広告)

Google広告(リスティング広告)は、検索キーワードに基づいてユーザーに最適化された広告を表示できる点から、新商品の販売開始やキャンペーン告知など、明確な目的を持つ短期的な販促施策として有効です。補助金・助成金の審査では、キーワード設定、配信期間、対象地域、広告費の根拠などが事業計画内で明確に整理されているかが重視されます

また、Google広告(リスティング広告)も、クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)、顧客獲得単価(CPA)などを報告資料として定量的に測定できる点が評価されやすく、販路拡大や新市場開拓といった目的との一貫性を保ちながら、広告施策を設計・実施することが求められます。

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補助金・助成金申請を成功させるためのコツ

補助金・助成金の採択を得るためには、制度の趣旨を理解したうえで、事業計画と広告施策を一貫した流れで設計することが重要です。
ここでは、Web広告を補助対象として申請する際に、審査で評価されやすいポイントを3つの観点から整理します。

補助金の目的と自社の課題をつなげる

申請書や事業計画を作成する際は、数値根拠を伴う計画として、以下の観点から整理しておくと効果的です。販路開拓や事業成長に位置付けることで採択につながりやすくなりますよ

申請準備の観点実務での行動例
自社課題の明確化既存顧客の属性・購買傾向を分析し、課題を定量化する
(例:リピート率◯%、新規顧客比率◯%)
事業目的との整合性「販路拡大」「地域外需要の創出」など、補助金の目的に合致するゴールを設定
施策の一貫性Web広告に加えて、LP改善やSNS運用など関連施策を計画に含める
成果の測定方法Googleアナリティクスや広告管理画面を活用し、効果測定・報告の方法を明記
期待される効果定量的な目標を設定(例:広告経由CV数+30%、CPA△20%など)

数ヶ月分を見通した広告費の計画を立てる

補助金・助成金の審査では、広告費の内訳(媒体別・期間別・クリエイティブ制作費など)を細かく整理し、「どの施策に、いつ、いくら投資するのか」を事業計画書内で可視化しておくことも重要です。特に、Google広告やSNS広告のように改善型の運用施策は、PDCAを前提とした費用設計を行うことで、実現性と継続性の両面で高く評価されやすくなります。

継続的な運用を前提とした広告計画は、補助金の目的である持続的な販路開拓や経営基盤の強化に資する取り組みとして、審査上も好印象を与えやすくなるでしょう

定量的根拠(数字・データ)を入れる

たとえば、「広告出稿3か月でWeb経由の問い合わせ数を前年比120%に増加」「クリック率(CTR)を平均2.0%から3.5%へ改善」といった、目標値と測定方法をセットで記載することで、審査側が成果をイメージしやすくなります。
以下のようなGoogleアナリティクスや広告管理画面などの第三者が定量的に確認できるツールを用いたデータ測定を明示しておくことで、計画の信頼性が高まります。データベースの測定・保存は、採択後の実績報告や次回申請時の裏づけ資料としても活用できます

測定項目使用ツール・方法記録・報告のポイント
アクセス数・セッション数Googleアナリティクス、サーチコンソール日次または月次で推移を取得し、グラフ化して管理
広告クリック率(CTR)Google広告・Meta広告マネージャ媒体ごとに成果を比較し、改善前後の変化を明示
コンバージョン数・CVRGoogleタグマネージャ・計測タグ設定問い合わせ・購入など目的別に計測タグを設定
顧客獲得単価(CPA)広告費 ÷ コンバージョン数で算出成果指標として「費用対効果」を数値で提示
地域別・媒体別効果広告配信レポート、分析ツール配信地域・媒体ごとの成果を可視化し、改善根拠を残す

よくある不採択パターンと注意点

よくある不採択パターンと注意点

ここでは、Web広告関連の申請で特に不採択につながりやすい代表的なパターンを整理し、注意すべきポイントを解説します。

目的の誤解・補助金の趣旨とのズレ

たとえば、2025年における小規模事業者持続化補助金の公募要領では、「事業者自らが課題を検討・計画し、販路開拓を行うこと」が前提とされています。この場合、外部業者の提案をそのまま転記しただけとみられる申請書や、支援者への依存度が高い計画では自らの検討ではないと見なされ、不採択や交付取消の対象となる場合があります。

目的や趣旨を誤解したまま申請すると、内容の整合性が取れず不採択となる恐れがあるため、各補助金の公募要領を確認することが重要です

現状分析・課題設定が曖昧

曖昧な計画は、実現性が低いと見なされる場合があります。採択をめざすには、自社の現状をデータで把握し、課題と解決策を定量的に示すことが不可欠です
現状を正確に把握したうえで課題を可視化できている計画は、限られた予算を有効活用できる事業者として評価されやすくなります。

チェック項目実務での改善策
現状の数値売上構成比、Web経由の問い合わせ数、CVRなどを明記する
具体的な課題「顧客層の固定化」「新規流入の減少」など、事実ベースで具体化する
施策提案の根拠課題と広告施策(SNS広告・LP改善など)の因果関係を説明する
市場・競合視点同業他社の広告出稿状況や顧客動向を比較し、自社の立ち位置を明示する
数値的根拠Googleアナリティクス・広告レポートなど、信頼できるデータを引用する

実現性の低さ

どの媒体を使い、どのように運用・改善を行うのか、スケジュール・体制・KPIを具体化していない計画は、再現性の低さから評価が下がるため注意が必要です。実現性を示すためには、次の観点を押さえて、計画の実行力を示すことが有効です。

  • 媒体・期間・配信地域・広告費を具体的に示す
  • 担当者や支援先の実績・役割分担を示す
  • 補助期間内に実施・報告・支払が完了する工程表を作成する
  • 定量データで検証する手段を明記する

担当者のスキル、支援事業者との契約関係、広告運用の改善フローなどを具体的に示すことで、実現性と持続性の双方を裏づけられる計画として評価されやすくなります

Web広告の補助金・助成金の活用事例

ここでは、実際にWeb広告を活用して販路拡大や集客効果を高めた中小企業の事例を紹介します。

飲食店|リスティング広告の活用により、新規顧客を獲得

ある飲食店では、小規模事業者持続化補助金を活用し、新メニューの販促と店舗認知の拡大を目的とした広告出稿を行いました。
Google広告でエリアや業種に関連するキーワードを精緻に設定した結果、新規顧客の来店につながったとされています。

小売業|広告運用とWebサイト強化で商圏外からの集客増に成功

ある小売業の事例では、補助金を活用してWeb広告と自社サイトの強化を並行して進めた結果、商圏外からのアクセスや来店・購入が増加しています。
広告運用にあたっては、地域を限定した配信から一定距離圏外の潜在層をターゲットにキーワードや配信地域を設定し、同時にWebサイトではモバイル対応や商品紹介ページの改善を実施しました。

まとめ

Web広告費は、事業計画との整合性・成果指標の明確化・根拠資料の保存などの条件を満たすことで、補助金や助成金の対象として認められる可能性があります。一方で、目的の誤解や計画の曖昧さ、実現性の不足などによって不採択となるケースも少なくありません。
補助金の趣旨を正しく理解し、自社の課題や事業目標を数値とデータで整理したうえで、継続的な広告運用と効果検証を前提にした事業計画を立てましょう。

※本記事に記載されている会社名、製品名、サービス名はそれぞれ各社の商標および登録商標です。

この記事の監修者

IT導入・補助金申請サポートコンサルタント
神前 元紀

システムソリューション営業、営業マネジメント、IT導入支援、システム設計、プログラミング、情報処理講師、マーケティングリサーチなど、幅広い分野で実務経験を積む。
特に中小企業のデジタル化支援や補助金申請サポートに精通し、「丁寧な仕事」と「心が通うコミュニケーション」を信条に、企業の成長を支援している。

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